星降る夜

2009年1月 8日 (木)

星降る夜 1

無機質なビルディング、利益得るためだけで内容の無い映画の看板、一昔ではありえなかったレーザービームのような電灯、自己主張の強い意味の持たないクラクションの音、死人が乗ってるような山手線の電車。
ここは空に星が見えることの無い大都会、東京。


「ああ。今日も飲みすぎた。」

斉藤充はそう言いながら、終電に乗るために渋谷駅を目指してた。その時間帯は、田舎では想像する事のできないほどの人間が足早に帰ろうと渋谷駅に集まっていた。その様子を見ていると充はものすごく嫌な気持ちになった。

「公園で少し休んでから、タクシーだな。」

充は田舎から東京に出てきて三年経った今でも、大勢の人間を見るのが慣れる事は無かった。公園に着き、ベンチに座り、空を見たがやはり星は出てなかった。そのまま寝そべるようにベンチに横になり、空を見ていた。充は星の無い夜空でも、夜空を見るのが好きだった。何か自分自身が空に吸い込まれ、空しか見えない、自分と空だけの時間を感じる時に、なんだか自由になっているかのようだったからだ。自由の無いこの東京での唯一の自由。充にとってそれは夜空だった。

「ばあ。」

何もない夜空から少女の顔が飛び込んできた。充は驚いた拍子にベンチから転げ落ちた。

「えっ。何?」

「さっきからここで寝てるけどさ。そこは私の場所なんだけど。」

そこには可愛らしい少女とその少女の体には不釣合いな大きなトランクケースが充を待ち構えていた。

「そこに居ると寝れないから、本当に邪魔なんですけど。」

「ここで寝てるの?」

「何か?悪い?」

少女は不機嫌そうに充を睨んでいた。充は関わらない方が良いと感じ、そこから逃げるように去った。公園を出た充は好奇心からか、少女が本当にそこで寝泊りしているか確認するために、もう一度公園に戻った。

少女の姿に目をやると、二人の警察官と何やら話していた。少女は充の姿に気づき「お兄ちゃん」と呼び、充の方へと駆け寄った。なにがなんだかわからない内に、警察官から家出をさせないでくれと言う注意を受け、何故だか少女と二人きりになってしまった。

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